ウマ科学会 2018:接着装蹄法における HANTON 蹄鉄の有用性

2018年のウマ科学会にて発表された演題の概要をご紹介します。

 

<発表の概要>
HANTON 蹄鉄とは、蹄側壁の一部分のみに接着する接着装蹄用の蹄鉄である。この蹄鉄はエクイロックスなどの接着剤が硬化するまでの間、肢を挙上しておく必要がないという利点があるだけでなく、蹄側壁の一部分のみで接着するため蹄機作用を阻害しにくいと考えられる。しかしJRA内での装着実績はないため、改装期間を4週間として20週間にわたり乗馬7頭に装着して実用性を確認するとともに、アルミ製蹄鉄を釘付け装蹄した場合と蹄踵間距離の変化量を比較した。その結果、蹄踵間距離の変化量にアルミ製蹄鉄を釘付け装蹄した場合と顕著な差がなかったことから、HANTON 蹄鉄は蹄機作用を阻害しにくいことが確認された。一方、接着部の蹄壁が落鉄により損傷した場合、再度接着しても再び落鉄する場合が多いことがわかった。

 

HANTON 蹄鉄とは
HANTON 蹄鉄とは、大きな側鉄唇の部分のみで蹄壁に接着する蹄鉄である。側鉄唇を覆うプラスチック製容器を蹄壁に両面テープで固定し、そこにエクイロックスなどの接着剤を流し込むことで接着するため、接着剤が硬化するまでの間、肢を挙上しておく必要がない。ちなみに、接着剤を流し込む前に蹄鉄を蹄に仮止めするために、蹄鉄の接蹄面に両面テープが付いている。また、接着剤を流し込んでから硬化するまでの間、蹄鉄が動かないようにラップで蹄鉄を固定しておくことを推奨している。接着方法についての詳細はホームページHANTON 蹄鉄ホームページに紹介されているので興味のある方は参照されたい。

 

蹄壁に接着するタイプのアルミ製蹄鉄には、HANTON 蹄鉄だけでなく、蹄鉄の外縁全周に布製カフが付いているシガフーズ蹄鉄(siga hoos shoe)もある。こちらも接着剤を塗り込んだ布製カフを蹄壁に密着させた後ラップで蹄鉄を固定しておけば、接着剤が硬化するまでの間、肢を挙上しておく必要がない。また、最大横径部より後ろのカフを切除するため、蹄踵の拡張が阻害されにくいと考えられる。

 

蹄壁に接着するタイプの蹄鉄にはアルミ製蹄鉄だけでなくプラスチック製蹄鉄もあり、海外では実に様々な接着用蹄鉄が市販されている。蹄鉄によって多様なメリットを打ち出しているため、装蹄療法への応用だけでなく競技馬への使用も増えているが、それらの蹄鉄の価格は海外でも依然として非常に高価である。