ウマ科学会 2018:ウレタン製蹄鉄の接着装蹄が蹄機作用に及ぼす影響について

2018年のウマ科学会にて発表された演題の概要をご紹介します。

 

<発表の概要>
アルミ製蹄鉄を接着装蹄した場合、蹄機作用を阻害する可能性があることは既に報告されている。一方で、海外では蹄機作用を阻害しにくいとされるウレタン製蹄鉄が市販されており、競走馬にも使用されているが、実際に市販のウレタン製蹄鉄を接着装蹄した場合に蹄機作用に与える影響についての報告はない。そこで、エクイロックスを用いてウレタン製蹄鉄(FLEXX, Sound Horse社製) の接着装蹄を行った場合とアルミ製蹄鉄の釘付け装蹄を行った場合で、センサーを用いて測定される蹄踵間距離の変化量に差があるかどうか、トレッドミル上の常歩、速歩、駈歩において比較した。その結果、ウレタン製蹄鉄を接着装蹄した場合とアルミ製蹄鉄を釘付け装蹄した場合で蹄踵間距離の変化量に顕著な差はなかった。したがって、ウレタン製蹄鉄の接着装蹄では蹄機作用が阻害されにくいと言える。これは、ウレタン製蹄鉄を接着装蹄した場合、柔軟性の高いウレタン製蹄鉄が蹄の負重に合わせて拡張・収縮するためだと考えられる。以上のことから、接着装蹄を行う場合にはウレタン製蹄鉄を用いることで、蹄機作用への影響を軽減できると言える。

 

海外で市販されているウレタン製蹄鉄について
 本報告で使用されたウレタン製蹄鉄は蹄負面に接着するタイプの蹄鉄である。この FLEXX に限らず Polyflexなど、多数の接着装蹄用ウレタン製蹄鉄が市販されている。これらの接着用ウレタン製蹄鉄のメリットとして、蹄機作用を阻害しにくいことだけでなく、アルミ製蹄鉄や鉄製製鉄よりも着地時の衝撃が小さいことが挙げられている。ただし、これらのウレタン製蹄鉄は海外でも依然として高価である。FLEXXに興味のある方は、Sound Horse 社 HP を参照されたい。