装蹄に関するデータ集記事一覧

装蹄師は皆、削蹄前後で先着部位が大きく変わらないことを経験的に知っているが、これを科学的に証明したデータがある。荷重分散センサーを用いて温血種18頭の荷重の分配を四肢について測定したところ、削蹄することで着地後に蹄が安定するまでの時間が顕著に短くなったものの、先着部位に変化は見られなかった。着地後に蹄が安定するまでの時間は後肢で前肢の約2倍 (前肢6.7ms, 後肢16.7msec) であり、削蹄...

クランポン(screw-in studs)を装着することで、特にsuspensory apparatus(繋靭帯、浅屈腱、種子骨靭帯)を傷めやすいと言われている。(前肢では、蹄が滑りにくくなると浅屈腱・繋靭帯の負担が大きくなる?)では、クランポンはどの位置に、どの長さ・形状のものを装着すれば良いのだろうか。残念ながら、この問いに対する答えが得られる文献は、今のところ存在しない。そこで、現時点で手元...

着地時の衝撃を和らげるために、装蹄師は様々な工夫をしてきた。着地時にかかる荷重は、馬では最大荷重に比べると非常に小さいため、着地時の衝撃を僅かに和らげたところで、骨折しにくくなるわけではない。しかし、関節に繰り返し加わる強い衝撃は、変形性関節症が進行する力学的な要因となると考えられている。また、蹄が潜り込みやすい軟らかい馬場(all-weather waxed track)の方が砂馬場と比べて速歩...

機器を用いて馬の動きを客観的に評価すると、大半の馬で動きの非対称性が確認され、跛行に分類できるそうだ。そして、不同蹄と歩様の違和感に関連性がある、という報告は多数ある。しかし、これらの報告から、歩様の違和感の原因は不同蹄だ、と短絡的に結論付けることはできない。そこで、不同蹄が生じる原因を考えるために、不同蹄に関するデータを紹介したい。仔馬を4週ごとに削蹄しても不同蹄を解消することはできない4週令か...

蹄鉄の重さを変えたとき、あるいは、肢端におもりを装着したときの肢の動き方の変化を測定したデータがある。アルミ製蹄鉄を装着したときよりも鉄製蹄鉄を装着したときの方が蹄の跳ね上がりが大きいクォータ―ホース6頭を用いて、鉄製蹄鉄とアルミニウム蹄鉄を装着したときの下肢部の動きを比較したところ、鉄製蹄鉄を装着したあと腕節がより大きく屈曲していたたが、18日で元に戻った。また、蹄の跳ね上がりは、装蹄後の経過日...

前肢では、着地直後に蹄が前に滑る馬場の方が、浅屈腱の負担が小さいことが確かめられている。また、蹄が前に滑るとともに蹄踵が沈み込む馬場の方が球節の沈下量が小さくなることから、グリップの強い馬場や硬い馬場では繋靭帯の負担が大きくなることを示したデータがある。アスファルト、fiber/sand mixed track、砂馬場における速歩で前肢球節の最大沈下量を比較すると、球節の最大沈下量は蹄が前に滑ると...

大きく heel-up すると深屈腱の負担が軽くなりやすい。球節を保持する役割を担っているのは主に浅屈腱・深屈腱・繋靭帯なので、heel-upすることで深屈腱の負担が軽くなった分、浅屈腱や繋靭帯の負担が大きくなる、と言われる。これはどの歩法においても正しいのだろうか。あるいは、前肢でも後肢でも正しいと言えるのだろうか。現時点で報告されているデータをもとに、heel-up したときの浅屈腱・深屈腱・...

馬場は、パフォーマンスに影響を及ぼすとともに、故障しやすい部位を変える。乗馬においても、合成馬場(synthetic surfaces)の進化により運動器疾患のリスクが低下してきた、と報告されながらも、利点だけでなく、欠点があることが認識され始めている。特に近年、海外では fiber/sand mixed trackの人気が高く、2020年の東京オリンピックでも使用される。これは細かいシリカにフェ...