項靭帯付着部靭帯炎

項靭帯付着部靭帯炎とは
後頭骨の項稜に付着している部分の項靭帯(下図)が損傷し、炎症が起こる疾患。

 

臨床徴候
● 銜受けに常に抵抗する。
● 騎乗時に頭を下げたり頸を曲げたりすることを嫌がる。
● 後肢の弾発性は良好である。
● 騎乗時に頭を上げたり、頭を振ったりすることが多い。

 

原因
無口をかけているときに暴れて立ち上がることで損傷する場合が多いが、サイドレーンや手綱などにより頸の動きが著しく妨げられることで損傷する場合もある。

 

診断方法
● 触診により疼痛反応を呈すことはない。
● X線検査を行うと、後頭骨の項稜(上図赤色矢印の項靭帯付着部)に新生骨の増生が認められる。第一頸椎背側縁の不整が認められる場合もあるが、臨床徴候との関連性はない。
● 超音波検査は解釈が難しい。靭帯の石灰化により shadowing artifacts が生じる。
● 局所麻酔浸潤後の疼痛徴候の消失により確定診断する。メピバカイン15mLを左右から浸潤させ、15-30分後に評価する。硬膜上腔に局所麻酔を浸潤させると運動失調を呈すため、浸潤させないように注意する。

 

治療方法
コルチコステロイドと局所麻酔を浸潤させたあと、8週間、銜を装着した運動(騎乗運動、調馬索運動)を休止する。運動再開後は曲線運動をなるべく控えるとともに、厩舎内で項を上下左右にゆっくりと曲げるリハビリを行う。鍼治療、レーザー、超音波、ショックウェーブ療法が有効な場合もある。

 

項靭帯下包炎(滑液包炎)は、感染性 / 非感染性項靭帯下包炎が頸の硬さ、銜受けへの抵抗の原因になることは稀だが、 C1 ? C2の背側部を触診すると疼痛反応を示す。超音波検査により項靭帯下包内の滑液増加、項靭帯下包の腫脹が確認される。

 

<参考資料>
1. Equine Neck and Back Pathology 2e p.189-190
2. Diagnosis and Management of Lameness in the Horse 2e p.610-611