抗菌薬の局所灌流(Regional Limb Perfusion)

● 肢端の感染症が疑われる場合、または危惧される場合、感染を制御するために抗菌薬の局所灌流を行うと良い。使用される抗菌薬は、濃度依存性抗菌薬であるアミノグリコシド系が一般的である。抗生剤の全身投与量を減らすことで副作用を抑えることができるだけでなく、局所灌流によって組織中濃度がMICの25〜100倍となるため、高い効果が期待できるとされる。
● 抗菌薬を静脈内投与した後、20〜30分は駆血帯を巻いておく。駆血帯を解くまで翼状針やカテーテルを留置しておくことが望ましい。24時間ごと3〜5日程度行うのが一般的である。
● 肢端の局所灌流では腕節の上・飛節の上で駆血する方法が一般的である。蹄内血管に抗菌薬を灌流したい場合は球節に駆血帯(幅広のゴムが良い)を巻くと良いとされるが、球節以下の局所灌流における総投与量の目安は提示されていない。一般的な局所灌流ではゲンタマイシン500mg-1g またはアミカシン500mg-1g を30-60mLの0.9%生理食塩水に溶き、静脈内に投与する。
● エンロフロキサシン、バンコマイシンの有効性も確認されている。局所灌流における投与量はエンロフロキサシン500mg、バンコマイシン300mgである。ただし、エンロフロキサシンは血管外に漏出すると血管周囲炎を誘発するので注意する。
● 時間依存性抗菌薬であるセフェム系も用いられる場合がある。局所灌流における投与量はセフチオフル150mg-1g、セファゾリン1gである。

 

<参考資料>
1. Manual of Equine Lameness p.439
2. Equine Medicine 6 p.529-531
3. Lameness in Horses 6e p.1118-1119
4. Equine Medicine 7 p.846-849