飼料の基礎知識

馬は草食動物なので、粗飼料を十分量食べさせることが重要である。
● 粗飼料…繊維含量が多く、デンプン含量が少ない
例)乾草(チモシー、アルファルファなど)、ヘイキューブ、ビートパルプ
● 濃厚飼料…繊維含量が少なく、デンプン含量が多い
例)エン麦、圧ペン(トウモロコシ)、フスマ、米ぬか

 

粗飼料の1日当たりの推奨給与量は、馬体重の1〜2%以上が目安で、運動によって不足するエネルギーを濃厚飼料で補う。濃厚飼料を全く与えない場合には、粗飼料を体重の2%以上与える必要がある。ただし、この場合、粗飼料のみでは不足する必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルをバランサーやサプリメントによって補う必要がある。常に青草を食べている馬は、比較的栄養素が不足しづらいが、飼育下で乾草を主体として給餌する場合には、乾草のみでは不足してしまう栄養素を補う必要がある。

 

ビートパルプは粗飼料に分類されるが、同じ重さ当たりの可消化エネルギー量が乾草の1.5〜2倍であり、濃厚飼料と粗飼料の中間的な性質を持つ。

 

乾草の基礎知識
乾草は、マメ科牧草とイネ科牧草に大別される。
● マメ科牧草…アルファルファなど (ヘイキューブは、アルファルファをキューブ状に固めたもの)
● イネ科牧草…チモシー、オーチャードグラス、バミューダグラスなど

 

マメ科牧草はイネ科牧草に比べて繊維含量が少なくタンパク質を多く含んでいるため、可消化エネルギー量が多い。したがって、マメ科牧草を給餌していると、太りやすい。また、マメ科牧草にはカルシウムが豊富に含まれているという利点があるためアルファルファを多く給餌している場合にはカルシウムの添加が不要である場合が多いと言われるが、カルシウムの含有量には大きな幅がある。

 

乾草は、その年の何回目に収穫されたかに応じて、1番草、2番草、3番草と呼ばれ、2番草以降は再生草と総称される。春先に収穫される1番草は柔らかくて青々としているため一見すると最も質が良いように思われるが、フラクタンが多く含まれるため、蹄葉炎の発症リスクが高い。また、一般に再生草の方が未熟な状態で収穫されることが多いため、タンパク質やミネラルなどを多く含むことが多い。ただし、暑熱環境下で生育した牧草はタンパク質やミネラルの含有量が低く、消化性も悪い。

 

乾草以外の飼料の基礎知識
ビートパルプ … 砂糖大根から糖を絞った後の残り粕
腸内微生物により分解されやすい繊維であるペクチン(構造性炭水化物)を多く含むため、食後血糖値の急上昇を抑えながら、カロリー摂取量を増やすことができるという特長がある。可消化エネルギーは乾草の1.5〜2倍であり、消化率はデンプンと同程度と言われ、濃厚飼料と粗飼料の中間的な性質を持つため、濃厚飼料の代替飼料として注目されている (蹄葉炎罹患馬がインスリン抵抗性を呈す場合の栄養管理)。また、リンの含有量に対してカルシウムの含有量が多いため、濃厚飼料と置き換えることで、カルシウムを多く給餌できる。

 

フスマ … 小麦を製粉する際の副産物
デンプン含量はエン麦より低く、タンパク質含量はエン麦より高い。カルシウムの含有量に対してリンの含有量が多いため、多給するとカルシウムが不足する。

 

カルシウムとリンの吸収は競合するため、リンを多給するとカルシウムが不足する。カルシウム:リン=1.7〜2:1の割合で給餌するのが理想である。高齢馬ではリンの吸収率が低下するため、カルシウム:リン=1.5:1が理想である。

 

<参考資料>
1. 競走馬ハンドブック p.241
2. Nutrient Requirements of Horses 6e p.70-79