蹄鉄の重さの違いにより、肢の動きが変わる?

蹄鉄の重さを変えたとき、あるいは、肢端におもりを装着したときの肢の動き方の変化を測定したデータがある。

 

アルミ製蹄鉄を装着したときよりも鉄製蹄鉄を装着したときの方が蹄の跳ね上がりが大きい
クォータ―ホース6頭を用いて、鉄製蹄鉄とアルミニウム蹄鉄を装着したときの下肢部の動きを比較したところ、鉄製蹄鉄を装着したあと腕節がより大きく屈曲していたたが、18日で元に戻った。また、蹄の跳ね上がりは、装蹄後の経過日数に関わらず鉄製蹄鉄を装着している時の方が高かった。ストライドの長さに変化は認められなかった。

 

一完歩の間に蹄が描く軌跡をflight arcという。

 

重い蹄鉄を装着すると蹄の跳ね上がりが大きくなる。ただし、跳ね上がりが大きくなっても、蹄の前方への振り出しは大きくならない。これは、着地前に総指伸筋と深屈筋が収縮して球節以下の関節の遊びを小さくすることで、着地に備えているからである。これをポインティング動作という。

 

 

 

後肢におもりを装着することで、馬が意識して後肢を高く上げる
FEI の規程では、競技中に肢端に500g以上の重さの装具 (蹄鉄を除く) を装着することを禁止している。しかし、馬6頭の後肢管に230gのおもりを装着して125cmの障害を飛越させたところ、おもりを装着しない時の後肢球節の最高値が1.46mだったのに対し、おもり装着時には1.6mになった。したがって、500g未満の重さであっても、重さのある装具を装着することで意識して後肢を高く上げる馬もいると推測される。ただし、おもりを装着することで障害飛越に必要な腰の筋肉を鍛えられる一方で、重すぎるおもりを急に装着すれば腰の筋肉が過度に伸ばされ、傷む可能性があると考察されている。

 

<参考資料>
1. Elodie E. Huguet et al. (2012) Effects of Steel and Aluminum Shoes on Forelimb Kinematics in Stock-Type Horses as Measured at the Trot. J. Equine Vet. Sci. 32, 262-267
2. Jack Murphy et al. (2009) Weighted boots influence performance in show-jumping horses. Vet. J. 181, 74-76
3. Equine Locomotion p.161-164