IHCS 2019:後肢のより良い装蹄法

2019年のインターナショナル・フーフ・ケア・サミットにおける Steve O’Grady 氏(獣医師)の講演の一部をご紹介します。以下の掲載内容は、あくまでも Dr. Steve O’Grady の主張をご紹介するものです。

 

後肢の荷重中心点はより蹄踵側に存在する。鉄尾が短いと、荷重中心点より蹄踵側の支持基底面が小さくなる。したがって、蹄踵が過高にならないように留意し、鉄尾を長めにすべきだ。ただし、蹄踵が低すぎると後肢の動きののびやかさが失われ、膝関節など後肢の上方の関節の動き方が変わる。よって、蹄踵が低すぎる場合は、蹄踵を上げる処置も必要となる。蹄踵が著しく潰れている場合は、一時的に跣蹄にしたり、連尾蹄鉄を装着したりすることで改善することもある。

 

後肢の装蹄により四肢の動きはどのように変わる?
後肢にエッグバーシューを装着したときに四肢の動きがどのように変わるか、調べたデータがある。10cmの砂利の上に砂を12cm敷いた深い馬場にて検証しているので固い馬場では効果を実感できない可能性があるが、エッグバーを装着すると後肢の蹄踵が馬場に沈み込みにくくなるため、より早いタイミングで後肢に体重がのりやすくなる可能性があることが示された。また、同研究から、蹄踵部分に幅の広い鉄橋を設置する、蹄叉部分を覆うタイプのヒールウェッジを挿入するなどして蹄踵部が滑りやすくなると、着地直後に後肢が馬体の下に滑り込むために馬が代償的に前肢の肩や肘を大きく伸ばすことが推測された。前肢ではグリップの弱い柔らかい馬場で運動した方が少なくとも浅屈腱の負担が小さいことが確かめられており、着地後に蹄踵が潜り込みながら蹄がやや前方へ滑ることで繋靭帯や浅屈腱の負担が小さくなると考えられているが、後肢では、過度に蹄が滑りやすくなることで肢元だけでなく腰や臀部の筋肉に大きな負担がかかるかもしれない。蹄角度を修正するために蹄叉部分を覆うタイプのヒールウェッジを挿入することで蹄の滑りやすさが変わり、負担の生じる部位が変わる可能性がある。

 

<参考資料>
1. Sebastien Caure et al. (2018) The influence of different hind shoes and bare feet on horse kinematics at a walk and trot on a soft surface. J. Equine Vet. Sci. 70, 76-83
2. N. Crevier-Denoix et al. (2009) Influence of track surface on the equine superficial digital flexor tendon loading in two horses at high speed trot. Equine Vet. J. 41, 257-261