蹄質を改善するとうたっているサプリメントには何が入っている?

主な成分とその役割
ビオチン … エネルギーを作り出す手助けをしているビタミン。皮膚や粘膜、蹄や毛の健康維持に深く関与している。

 

亜鉛 … 細胞を収縮する上で必要不可欠なミネラル。炭水化物を消化吸収したり、タンパク質を合成したりする反応にも関与し、表皮組織(皮膚や蹄など)を健全な状態に保ち、ビタミンAを運搬・利用する機能も担う。
… 好中球(白血球の一種)産生に関与するとともに、白血球が異物を排除する作用を発揮するために不可欠なミネラル。抗体(免疫反応に関与する物質)の生成やリンパ球(白血球の一種)の複製にも関与する。また、亜鉛とともにフリーラジカルの除去(酸化ダメージから体の組織を守る)に関与する。したがって、細胞を健全な状態に保つ上で必要不可欠であり、コラーゲンの合成、ケラチン(蹄を構成するタンパク質)のジスルフィド結合(硫黄が関与する結合)の形成においても不可欠である。

銅と亜鉛は吸収が競合するため、バランスが大切である。

 

リジン … 欠乏しやすい必須アミノ酸
メチオニン … 欠乏しやすい必須アミノ酸

 

タンパク質とは、複数のアミノ酸(動物の体をつくるタンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類)を組み合わせたもの。必要なアミノ酸が1つでも欠けると、そのタンパク質を合成することはできない。ちなみに、ケラチン(蹄を構成するタンパク質)は18種のアミノ酸から構成される。アミノ酸には動物の体内で合成できるものと合成できないものがあり、体内で合成できないために食餌から摂取する必要のあるアミノ酸を必須アミノ酸という。

 

硫黄 … アミノ酸の構成要素となるため、蹄を構成するタンパク質を合成する上で必要不可欠な成分。特に、アミノ酸どうしを架橋するジスルフィド結合(硫黄が関与する結合)は蹄角質を強固な状態に保っている。

 

ビオチンが欠乏すると蹄はどうなる?
ビオチンが欠乏すると蹄角質の質が落ち、蹄壁がもろくなったり、白帯が軟らかくなったり、負縁裂が生じたりすると言われている。ビオチンは腸内細菌によって合成される。しかし、1日20mgのビオチンを2年半〜3年間与えた後、蹄壁の質が確認された、という報告がある。現場では、1日10〜30mgのビオチンを与えることで6〜9ヶ月後に蹄角質の改善を確認できると言われている。

 

蹄の質が悪化している場合、@ 蹄角質の外層が崩壊している場合とA 内層が崩壊している場合の2種類あるが、外層が崩壊している場合には、低用量のビオチン(1日15mg)でも効果が確認できる場合がある、と言われている。ただし、蹄角質が悪い場合、大半は内層が崩壊しており(ある調査では94%)、ビオチンだけでなくタンパク質やカルシウムも不足していると推定される。したがって、ビオチンのサプリメントだけに頼らずに、飼料全体のバランスを見直す必要がある場合が多い。
ビオチンは水溶性のビタミンなので、過剰量与えても毒性はない。ただし、過剰量与えてもタンパク質など他の栄養が不足していれば蹄の質は改善しないため、ビオチン入りの高価なサプリメントを過剰量与えても、無駄なお金を消費するだけで、効果を実感できないことが多い。また、サプリメントにはビオチン以外のビタミンやミネラルが配合されており、サプリメントを過剰量与えることでビタミンやミネラルのバランスを崩してしまうこともある。サプリメントを過剰量与えるのではなく、飼料全体のバランスを考えることが重要だ。

 

<参考資料>
1. A. Gomez et al. (2019) Prevention of Lameness from a Nutritional Point of View, Lameness in Ruminants
2. Nutrient Requirement of Horses 6e p.120