ベルギー研究発表会:臨床所見のない画像診断所見

2019年9月19〜21日にベルギー・ゲントにて開催された「馬のスポーツ医療とリハビリに関する研究発表会」におけるJean-Marie Denoix氏の講演の一部をご紹介します。

 

● 画像診断技術の発展とともに多様な所見が発見されるようになり、獣医師を悩ませている。しかし、重大な問題なく競技に出場している競技馬は多く存在するし、左右対称な馬は存在しない。したがって、画像診断所見のみをもって過剰解釈や過剰診断することを避けなければならない。そこで、健康馬でも散見される画像診断所見をご紹介したい。

 

● 蹄スカイビュー像において、蹄骨掌突起に窪みが認められる場合がある(Clinical Radiology of the Horse 3e p.71 Fig.3.10)が、これは蹄関節の側副靭帯が付着する部位であり、正常所見である。非感染性骨嚢胞様病変(Clinical Radiology of the Horse 3e p.79 Fig.3.16a)とは区別される。

 

●トウ骨または遠位種指骨(navicular bone)周囲の“浮腫” は特にMRI検査において認められる場合があるが、異常所見ではない。また、特に蹄踵の低い馬で超音波検査によりトウ嚢炎が疑われることがあるが、信頼性は低い。

 

● 頸椎の形は個体差が大きい。関節突起間関節のリモデリングが認められれば頸椎の変形性関節症と判断できるが、頚椎の“変形”をもって判断することはできない。

 

● 超音波検査により球節の掌側輪状靭帯断裂が疑われるが、掌側輪状靭帯と近位指輪状靭帯との間の空隙を拾っている場合がある。 

前肢端の構造

 

● 大腿脛骨関節の尾頭側像(caudocranial view)において、大腿骨内側顆に小さな窪みが認められる場合がある(Clinical Radiology of the Horse 3e p.378 Fig.8.10b)が、軟骨下骨の性状が正常であれば問題ない。また、大腿骨内側顆のわずかな平坦性も同様に問題ない。

 

<参考資料>
Clinical Radiology of the Horse 3e