蹄バランスを整えることで膝蓋骨上方固定を再発しにくくなる?

膝蓋骨上方固定とは
内側膝蓋靭帯 (medial patellar ligament) が内側滑車稜に引っかかることで膝を曲げることができなくなる疾患。

 

 膝を前から見た図

 

相反連動構造(heel-upしたとき、浅屈腱や繋靭帯の負担が大きくなる?)により、膝が伸展位に固定されたとき、飛節も伸展位に固定されるため、飛節以下が伸展したまま、蹄を引きずる様子が観察される。
膝関節が曲がりにくいものの、膝蓋骨固定が解除された瞬間に後肢が勢いよく屈曲する場合もある。この場合、蹄は正常より高く上がる。下り坂では後肢が伸展しやすくなるため、頻繁に固定されやすい。

 

原因
● 後肢がまっすぐの馬(大腿脛骨関節は通常約135°だが、145°程度の馬)で発症しやすい。したがって、遺伝的素因がある場合が多い。
● 大腿四頭筋の筋緊張の低下、後肢の外傷性過伸展により内側膝蓋靭帯が伸びてしまうと発症しやすくなる。一度発症すると靭帯が伸びてしまうため、再発しやすい。
● 内側膝蓋靭帯はもともと他の2つの膝蓋靭帯より弱い。特にトレーニングを始めたばかりの若馬は筋緊張が弱いので、急に過度なトレーニングを行った後に馬房内休養をさせると、発症しやすい。

 

膝蓋骨固定の解除方法
膝蓋骨を内方に押して靭帯を緩めた上で、上方に持ち上げることで上方固定を解除することができる。固定が解除されると肢が急に動くので、注意する。また、馬を後退させることによっても、固定を解除できる場合がある。

 

膝蓋骨上方固定を再発しにくくする装蹄法
● 内蹄側壁が高く、蹄尖が長い場合に再発しやすいので、装蹄周期を短くし、蹄のバランスを適切に整えることで再発しにくくなる。
● 大腿四頭筋の筋緊張を高めるために運動をすることで、再発しにくくなる。運動量が落ち、筋緊張が緩むと再発するため、長期休養は禁忌である。

 

<参考資料>
Lameness in Horses 6e p.793