蹄軟骨化骨症用の蹄鉄(sidebone shoe)とは?

蹄軟骨化骨症(sidebone)とは

蹄軟骨が遠位から近位に向かって化骨する疾患。後肢よりも前肢で多く認められる。
蹄軟骨や蹄軟骨を固定する靭帯が損傷し、損傷部に異栄養性石灰化が生じた結果、骨化するとされるが、メカニズムの詳細は明らかになっていない。半径の小さい円運動、硬い馬場での運動を多く行っている馬が罹患しやすい。

蹄軟骨を固定する4つの靭帯

 

異栄養性石灰化とは

 

損傷(変性あるいは壊死)した組織や吸収が困難な物体(寄生虫や血栓)のまわりに、局所的に石灰(カルシウムイオンを含む結晶)が沈着すること。

 

臨床徴候
● 化骨した部分が骨折しない限り痛みはないと言われているが、化骨した部分の柔軟性が低下することにより、歩様に違和感が生じる可能性はある。また、左右の蹄軟骨が著しく非対称に化骨した場合、跛行の原因になる場合もあると言われている。
● 化骨部が骨折することはまれである。レントゲン検査により骨折線の存在が疑われたとしても、化骨部の骨折であるとは限らない (後述) ため、神経ブロックなどにより臨床的意義(跛行の原因であるかどうか)を判定する必要がある。

 

レントゲン検査で化骨部の骨折を診断する際の注意点
● 蹄骨の骨化中心は掌突起に存在し、およそ18ヶ月齢で閉鎖する(Clinical Radiology of the Horse 3e p.60 Fig.3.7a, Fig.3.7b)。しかし、骨形成不全により18ヶ月齢以降も掌突起が分離しているように見える場合がある(Clinical Radiology of the Horse 3e p.73 Fig.3.12)。
● 蹄軟骨が2ヶ所の靭帯付着部から化骨した結果、化骨部の間が骨折線のように見えることがある。この場合はふつう、下図矢印の場所にX線透過性の高い領域が認められるため、この位置に骨折線が認められたとしても化骨部の骨折であると断言できない。数週〜数ヶ月後に再びレントゲン検査を行い、変化を観察する必要がある。
● 化骨部ではなく蹄骨が骨折している場合がある。特に掌突起の骨折はラテラル像ではわかりにくいため、スカイビュー像(dorsoproximal-palmarodistal oblique view)を撮影する必要がある。

 

サイドボーン・シュー(sidebone shoe)とは
蹄軟骨が化骨している側の接地面外縁に広範囲にわたって斜面を設けることで反回の良化を図る蹄鉄。両側の蹄軟骨化骨が認められる場合は、全周にわたって反回を良化させると良いと考えられる。化骨した蹄軟骨を元に戻す治療法は存在しないため、装蹄療法が唯一の対処法であると言える。
ただし、跛行の原因が化骨部の骨折である場合、サイドボーン・シューを装着することで運動できる訳ではない。蹄軟骨化骨部が骨折した場合、骨折部の外科的除去は推奨されないため、骨折部が癒合するまで保存療法を行う。

 

<参考資料>
1. Clinical Rqdiology of the horse 3e p.80-81
2. Lameness in Horses 6e p.11, 513-514
3. 動物病理学総論 第2版 p.51