蹄壁鑢削法の検討

※ 2019年 インターナショナル・フーフ・ケア・サミットにおけるSteven Beane(装蹄師)の講演の概要をご紹介します。

 

蹄尖壁をまっすぐに鑢削するのではなく、やや丸く鑢削することで、蹄底のアーチが浅くなりにくくなるのではないか、と考えたため、鑢削法の効果を検証した。肢軸が比較的まっすぐである馬を6頭選び、左前を丸く鑢削し、右前をまっすぐに鑢削した。35週ごとに同様の装蹄を3回行った後、4回目の装蹄時に左前をまっすぐに鑢削、右前を丸く鑢削し、35週おきに5回目、6回目の装蹄を同様に行った。その後、7回目の装蹄にて再び左前を丸く鑢削し、右前をまっすぐに鑢削した。装蹄のたびに蹄底に充填剤を入れて型をとり、蹄底の深さが鑢削法と連動して変化するかどうか調べた。

 

得られたデータを分析した結果、鑢削法の違いによって蹄底の深さに顕著な差(統計的に有意な差)はなかった。ただし、装蹄3回まっすぐに鑢削→装蹄3回丸く鑢削→装蹄3回まっすぐに鑢削を行った右前肢蹄では、挫跖になった馬が1頭いた。検証する馬の頭数を増やす、あるいは、同じ鑢削法を続ける期間を長くすることで、蹄底の深さに明らかな差が観察される可能性がある。

 

 丸く鑢削

 

 まっすぐ鑢削

 

装蹄法の違いにより生じる差について
わずかな装蹄法の違いにより生じる蹄の変形の差をデータとして表すことは非常に難しい。この講演でも、結局、顕著な差は認められなかった、と報告されている。
装蹄師は装蹄法の違いにより生じる差を感じ取りながらより良い装蹄法を検討していく訳だが、この差を検証してみると、統計学的に顕著な差であるとは認められないことが多い。わずかな差であるために、誤差との判別がつかないからだ。「統計学的に顕著な差」ではないからといって全く差がないという訳ではないが、常に「この差はたまたま見られたものかもしれない」 と考えてみる必要があることは確かだ。